どうも、あおりんご(@aoringo2016)です。
あなたは貨幣の流通速度を知っていますか?
これは、経済においてどれだけ貨幣が使用されたのかを表します。
日本経済は1970年以降ずっと貨幣の流通速度が減少しています。
今回はこの貨幣の流通速度の理論と、日本経済における貨幣の流通速度を時系列データとグラフでまとめましたのでご紹介します。
- 貨幣数量説とは「フィッシャーの交換方程式」と呼ばれる方程式
- 貨幣の流通速度はマネーストック統計と名目GDPで算出できる
- 日本の貨幣の流通速度は1967年以降減少し続けている
マネーストック統計からみる貨幣の流通速度とは
マネーストック統計とは
マネーストック統計とは
各金融期間が世の中に流しているお金の量
となります。
詳しくはいかの記事をご覧ください。
<関連>【わかりやすく図解】マネーストック統計とその時系列データとは
貨幣数量説(quantity theory of money)とは
貨幣の流通速度を説明する前に、貨幣数量説の理解が必要ですので簡単に解説していきます。
貨幣数量説とは「フィッシャーの交換方程式(Fisher’s equation of exchange)」と呼ばれる方程式で表されるもので、アーヴィング・フィッシャーにより考案。
MV = PT
- M : 貨幣量
- V : 貨幣の取引流通速度
- P : 物価
- T : モノ・サービスの取引量
M:貨幣量(Money)
貨幣量(Money)とは、世の中にある貨幣の量のことを指します。
例えば世の中に1,000円札が5枚しかなかったとします。
となると、世の中の貨幣量は5,000円となります。
V:貨幣の流通速度(Velocity)
貨幣の流通速度(Velocity)は、ある期間の貨幣の使用回数のことをいいます。
この世の中に1,000円しかないこととします。
その1,000円を使ってりんごを1,000円で買えば、1回の使用となります。
図2. のようにさらに、1,000円で取引を行えば1,000円の使用回数は増えます。
図2. では2回の使用回数となります。
MV:購買価格総額
1,000円札が5枚しかなく、それぞれの1,000円が4回の取引を行えば、その経済圏は20,000円になります。
この20,000円を購買価格総額といいます。
つまり、貨幣の流通速度が早いほど貨幣がよく使用されよく交換されていることになります。
P:物価(Price)、T:取引量(Transaction)、PT:販売価格総額
Pは物価(Price)を表し、Tは取引量(Transaction)を指します。
例えば1個あたり200円のりんごが年に100個販売できたとします。
そうすると、販売価格総額は20,000円となります。
MVとPT(購買価格総額と販売価格総額)
貨幣量と流通速度、物価と取引量が同じ経済圏であったとします。
となると、その経済圏の購買価格総額と販売価格総額は、同じになります。
マネーストック統計と名目GDP
これらを現実世界で考えてみましょう。
MとPTは以下の数値に置き換えることが可能です。
※物価変動を加味するため名目GDPを使用
通貨量は一国の通貨量となるためマネーストック統計、販売価格総額は一国の経済規模を表す名目GDPとなります。
マネーストック統計からみる貨幣の流通速度
一国の貨幣の流通速度
フィッシャーの交換方程式(MV = PT)から貨幣の流通速度が導き出せます。
この式を利用して一国の貨幣の流通速度を表すと、以下の図8.のとおりとなります。
貨幣の使用回数は貨幣の流通速度でありましたので、
すなわち、
貨幣の流通速度 = 名目GDP / マネーストック統計
となります。
時系列データからみる日本の貨幣の流通速度
時系列データから日本の貨幣の流通速度を見てみましょう。
※名目GDPは1979年までは1990基準の68SNA、1993年までは2000年基準の93SNA、1994年以降は最新の2008SNAを使用
※マネーストック統計はM2を使用しており、2003年までは旧マネーサプライ統計のM2+CD、それ以降はマネーストック統計のM2を使用
図10. は1967年から2019年までの日本の貨幣の流通速度を表しています。
青線が貨幣の流通速度、オレンジ線がトレンドラインとなっています。
またトレンドラインよりも下回ってればマネーが過剰にあったこととなります。
このように、1967年から2019年までの時系列データを見てみると、年を重ねるごとに貨幣の流通速度、すなわち貨幣の使用回数が減少していることがわかります。
日本の貨幣の流通速度が減少している2つの要因
フィッシャーの交換方程式より以下の条件が揃ったとします。
- PT(名目GDP):減少
- M(マネーストック統計):増加
つまり、この2つの条件が揃えば貨幣の流通速度が減少することがわかります。
これらのことから、日本の貨幣の流通速度が減少している要因として2つの要因が考えられます。
- 日本経済停滞によるお金需要の低下
- 日本銀行によるマネタリーベースの増加
名目GDPは、物価が含まれています。
日本の物価(CPI)は、データをとりはじめた1970年から現在まで3.3倍まで増えているものの、1990年にはいってから横ばいがつづいていることから、物価が上昇していないことがわかります(以下、関連参照)。
<関連>【2020年5月度 発表】日本の消費者物価指数(CPI)とその推移とは
日本が経済成長しておらず停滞している、つまり日本はデフレであるということです。
<関連>【わかりやすく図解】経済の物価を表すインフレーションとデフレーションとは
さらに、ここ数年で日本銀行の金融緩和によりマネタリーベースが増加したことにより、マネーストック統計内のM2が増加しました。
<関連>【2020年 決定版】日本銀行の役割と世の中に流れるお金の関係性とは?わかりやすく図解
すなわち、フィッシャーの交換方程式より貨幣の流通速度が減少する要因が現在の日本経済に顕在していることがわかります。
貨幣の流通速度を利用する問題点
貨幣の流通速度を考えるにあたって問題点があります。
貨幣の流通速度は貨幣が使用されてはじめて回数がカウントできます。
一方で貯金状態であれば貨幣は使用されないため回数がカウントできません。
したがって正確な数値を出すことは困難となります。
まとめ
今回はこの貨幣の流通速度の理論と、日本経済における貨幣の流通速度を時系列データでまとめたグラフをご紹介しました。
- 貨幣数量説とは「フィッシャーの交換方程式」と呼ばれる方程式
- 貨幣の流通速度はマネーストック統計と名目GDPで算出できる
- 日本の貨幣の流通速度は1967年以降減少し続けている
あおりんご
出典
出典1:内閣府のGDP統計
出典2:日本銀行データベース